片桐はいりさん
片桐はいりさん
彼女が登場すると、その顔面の迫力に誰もが一瞬釘付けになり、思わずくすっと笑いたくなってしまうんじゃないだろうか。
その彼女が、今日は例のあの一節を暗唱し出た。
原始、女性は実に
太陽であつた。
真正の人であつた。
今、女性は月である。
他に依つて生き、
他の光によつて輝く、
病人のやうな
蒼白い顔の月である。
寝っ転がって、寝ぼけ半分で録画を視ていた私の右目から、涙が伝っていた。
俳優さんの底力によって昔のことを思い出す。
朝ドラのヒロインは現在、女学校の五年生。
新学年の教室で、片桐さん扮する東堂チヨ先生は、床にあぐらをかいてみせて女学生の目を白黒させます。
そして、
「みなさんは、周囲の考える、女生とはこうあるべきだ、という定義を疑ったことがありますか?」
「誰でもできることを、女性だからできない、してはいけない、と、決めつけてはいませんか?」
と問うたのです。
……私も五年生の時でした。
新しく赴任した女の先生が、
新学年の担任になって間もなく、
「お味噌汁、お茶碗、お花……なんで“お”をつけるのか、味噌汁でいいじゃないか」
とおっしゃったのです。
残念ながら、私は五年生は五年生でも女学校の五年生ではなくて、小学校の五年生でしたので、
その時、主人公のようにらいてうの書と出会うことはなかったのですが、
今朝のヒロインと同じ様に、何か頭の中が変わってしまったのです。
尤も、ヒロインは「清々しい気持ち」になったそうですが、
私の方は、中半脅迫的に「お」を取って話すようになり、
以来、「ねばならない」が一つ増えてしまう結果となったのでした。