「4歳と14歳で、生きようと思った」
「自伝的小説」への演出と言うことで真っ先に思い出すのは、映画(アニメ)『火垂るの墓』の冒頭です。
あのシーン─兄と妹が列車に乗って揺られていく─あれは小説には全く無いものでした。
原作者の野坂昭如氏は、「その時」自分が妹に対して優しくなかった事を責めて「火垂るの墓」を書いた。しかし彼は小説を書いても恐らく自分を許した事は無かったのだと思います。
小説のごく始めに出てくる表現、「淸田は死んだ」という俯瞰した視線に私は、彼の鋭い自己批判のまなざしを見るのです。
しかし、時を経て、映画関係者はもう老人にさしかかった野坂をもひっくるめて鎮魂します。
「あの時、あなた自身も子どもだったのだ」
先にも述べた通り、多くの「原作付き」の映像化には余分な、あるいは過剰な“演出”が付き物かと思いますが、私はあんなにやさしさに満ちた演出というものは、あれが初めてでした。
そして、活字ではややもすると上滑りしそうなメッセージを、映像の世界ではあの様に暖かく、つましく、美しく、体現出来るものかと感嘆したのです。
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